Internet Explorer is not supported
Sorry, please use another browser such as Google Chrome or MozillaFirefox

口腔内スキャナーがどのように機能するか?

Andrew Singer

歯科ライター

3Shape

デジタル歯科について数年間書いてきましたが、自社の口腔内スキャナー技術が具体的にどのように機能するのか、詳しく説明したことがないと気づきました。 そこで私はTRIOSの開発部門に足を運び、同僚にTRIOSの口腔内スキャナーの仕組みと、一般的な口腔内スキャナーの仕組みについて説明してもらいました。

口腔内スキャナーの技術をステップごとに解説します。

そこでMads Falkenberg ChristiansenとGabija Kirsanskeに出会いました。 彼らの説明を聞いていると、まるで量子物理学の講義に間違って潜り込んだように感じました。 それほどまでに、TRIOSには驚くべき技術が詰め込まれているのです。特に、最新のTRIOS 5ワイヤレス口腔内スキャナーのようにコンパクトな機種では、その技術がさらに際立ちます。

基本的な原理として、口腔内スキャナーはカメラと同じ仕組みを持っています。 カメラと同じように、光を対象物に当て、反射させます。 その後、スキャナーのレンズは反射した光をセンサーに戻し、1つの焦点で光を集めて鮮明な画像を生成します。 その画像を組み合わせて歯の3D模型を造形します。

口腔内スキャナーは基本的にデジタルカメラと同じ仕組みですが、驚くほどの高速撮影で膨大なデータを処理しながら画像を取得します。 さらに、取得した数千枚の画像をスキャナーと専用ソフトウェアが組み合わせて3D模型を造形し、その際に色の情報も同時に取り込みます。

数字で見る歯科用デジタルスキャン

TRIOS口腔内スキャナーは、1秒間に約2,500枚の画像を撮影します。この数値がどれほどすごいか、少しイメージしてみましょう。

2,500枚/秒の画像を整理してみましょう:

  • 標準画質ビデオは1秒間に25フレーム/画像をキャプチャします。
  • ハイエンドのカメラでは、30~60fps/画像/秒、新しい機種では120fpsのものもあります。
  • TRIOSは2,500枚/フレーム/秒!

TRIOSのセンサーは、約100枚の画像ごとに「サブスキャン」と呼ばれる3Dデータを生成します サブスキャンとは、スキャナーが捉えた形状と色の情報を含む点群データ(3Dデータ)のことで、対象物を立体的に表現します。

サブスキャンのサイズ(ボリューム)は、スキャナーの先端部(チップ)のウィンドウのサイズに相当し、 TRIOSの場合、これは約2x2x2cmの大きさです。 TRIOSは1秒間に約25のサブスキャンを作成し、それらを組み合わせて詳細な3Dモデルを生成します。

口腔内スキャナーの動作原理:データサイズ

また、光速イメージセンサーは1秒間に約2.5ギガバイトのデータを生成します。 つまり、スキャナーのハードウェアとソフトウェアは、生成されたデータを即座に約40MBまで圧縮し、PCでの転送や処理が可能なサイズにする必要があります。この圧縮を行わないと、1つの歯列をスキャンするだけでクリニックやラボのネットワークが負荷に耐えきれず、パンクしてしまう恐れがあります。

つまり、スキャナーのハードウェアが画像を取り込み、サブスキャンを計算しながらデータをPCに送信している間に、TRIOSソフトウェアがデータをリアルタイムで処理し、数千ものサブスキャンをつなぎ合わせて1つの3D模型を作り上げているのです。また、色や蛍光テクスチャを含む歯列全体の3D模型を構築しています。

同時に、各サブスキャンが模型上のどこに適合するかを特定し、常に新しい情報リアルタイムで追加しながら3D模型を更新しています。

スキャナーとソフトウェアは、点群データ同士の間に必ず表面が存在することを認識し、点群データを三角形メッシュの形に整理していきます。

この三角形に整理された点群データが、3Shapeのロゴの三角形の由来です。

白黒の三角形がたくさん並んだスキャン画像を見たことがある方なら、おそらくお気づきでしょう。

スキャナーが画像を高速で撮影している間、内蔵されたAIがリアルタイムで画像を分析し、「これは舌だから不要、これは指だから除外しよう」と判断しています。

こうして、不要なデータを自動的に排除しながら、取得したサブスキャンを組み合わせて、色付きの3Dの口腔模型を作り上げます。

ワイヤレス口腔内スキャナーの動作原理

ここからが、この技術の興味深いところです。 前述の通り、TRIOSは1秒間に2,500枚の画像を撮影していますが、これらはすべてカメラで撮影したような2D画像です。 これをどうやって3Dにするのですか?

Gabijaによると、この技術はフォーカス・スキャンと呼ばれるものです。 この技術こそが、TRIOSが他の多くのスキャナーと一線を画している点でもあり、。 3Shapeがフォーカス・スキャンに関する多くの特許を取得している理由です。

企業秘密は明かせませんが、TRIOSはカメラのようにレンズがあります。 カメラのように、レンズシステムは異なる距離に焦点を合わせることができます。 TRIOSスキャナーは、フォーカスを自動で前後に調整します。 同時に、フォーカスレンズの移動に合わせて位置を正確に追跡するスケール(測定基準)も備えています。 そのため、撮影されたすべての画像に対応するレンズの位置情報が取得されており、そのデータを基に画像ごとの深度を計算することができます。

つまり、画像を撮影するときに「この位置でレンズのピントを合わせた」と認識し、次の画像では「別の位置でレンズのピントを調整した」と把握している、という仕組みです。 こうして、2つの画像間で深度を測定し、比較しています。

歯は独特な形状。

でも、ここからがさらに面白いところです。 歯科医療従事者ならご存知のとおり、歯は非常に独特な形状をしており、写真でうまく捉えるのが難しい対象物です。 歯を正確に撮影するには、TRIOSが撮影した画像を歯の表面に投影する必要があります。

そうしないと、光が歯の表面で反射してしまったり、歯に吸収されたり、さらには光が歯を通り抜けてしまうことがあります。 これは、歯が半透明で、光を通しやすい特有の性質を持っているためです。 Gabijaはこの後、もう少し詳しく説明します。

チェッカーボードから点群へ

その前に、TRIOSの話に戻りましょう...歯に投影される画像は、市松模様のような格子状の形をしています。 TRIOSは、この模様を使って、レンズがどの位置でピントを合わせているかを判断し、その情報から画像の深度を計算します。 市松模様は歯の表面にコントラストを作り出し、歯の半透明な特性による影響を補正し、より正確な深度情報を取得できるようにしているのです。

Gabijaによれば、この模様を使うことで、異なる深さで取得した画像の層(レイヤー)を作り出せるとのことです。 これらのレイヤーが3Dサブスキャンの元となります。

彼女の説明によると、「レンズに組み込まれたスケールを使って焦点面までの距離を測定し、深度情報を取得します。 レイヤー化された画像を組み合わせて、たくさんある点群データの1つを作成します。」とのことです。これらの点群データは1秒間に2.5GBのデータ量になりますが、40MBまで圧縮して処理しています。

この仕組みを理解すると、スキャナーが口腔内の特定の部位をスキャンするのが難しい理由も納得できます。 スキャナーは手が届きにくい部位をただ撮影するだけでなく、その部位の深度を測定して3D画像を作成しなければなりません。

つまり、TRIOSの場合は、その市松模様を届きにくい部位に投影し、ピントを合わせ、撮影深度を特定し、それを1秒間に2500枚の画像で行うということです!

口腔内スキャナーの種類

高価格と低価格のスキャナーモデルを分けるポイントをMadsが説明します。 口腔内スキャナーメーカーごとに、これらの画像やサブスキャンを処理するソフトウェアの性能には大きな差があり、特に隣接面の画像処理ではその違いが顕著に表れます。

低価格なスキャナーは、こういった複雑な部位の表面を正確に捉えるのが苦手だそうです。 市場に出回っているスキャナーはすべて、光学印象や3Dスキャンを撮ることができます。

しかし、低価格のスキャナーでは、例えば歯間や遠心面、アンダーカットなど、届きにくい部位のデータ取得が難しい傾向にあります。

歯の興味深い光学特性

それでは、再び歯の話に戻りましょう。 Gabijaは、「歯はスキャンするには特殊な表面を持っている。」と言います。

歯には非常に興味深い光学的特性があります。 歯に均一な光を当てると、滑らかな表面と均一な色調により、一貫した反射を示します。 さらに、光を歯に投影すると、歯は半透明であるため、光の一部が歯の内部で散乱します。 正確に言うと、半透明なのはエナメル質です。

TRIOSでは、3D模型を構築するために、歯の内部ではなく歯の表面をスキャンする必要があります。

 

半透明の歯

市松模様の画像を歯に投影することで、TRIOSはこれら2つの課題を解決しています。 まず、市松模様を用いて歯の表面にコントラストを生み出します。(このとき、必ずしも光の偏光を使用する必要はありません)

次に、光の偏光を利用することで、歯の表面からの信号を強調します。

口腔内スキャナーの精度

なぜなら、3D画像を作成するために、歯の表面からの深度を正確に測定する必要があるからです。 スキャンに基づいてクラウンを作成する場合、歯が半透明だからといって歯の内側から1ミリずれた単位で測定するのではなく、歯の表面から正確な測定データを取得する方がよいでしょう。このことから、歯の半透明性が 口腔内スキャナーの精度に影響を与える理由がわかります。

口腔内スキャナーの種類:パウダーと非パウダー

昔のスキャナーは歯にパウダーを吹き付けて使用していたため、半透明性の影響を抑えることができ、スキャンがより簡単に行えていました。 しかし、パウダーの使用は手間がかかり、誰も好んで使いたがりませんでした。 もし、歯の光学的特性についてさらに詳しく知りたい場合は、Dr. James Fondriestの論文を参照してみてください。天然歯の光学特性に関する詳しい情報が紹介されています。

歯は半透明であって透明ではないため、3Shapeでは歯の表面をスキャンするために異なる技術を採用しています。 また、入れ歯やその他の修復物を「キャラクタライズ」(歯の色調や質感を再現して個性を持たせること)する技術が、非常に特殊で高い技術を要する理由でもあります。

口腔内スキャナー技術:偏光

TRIOSが歯の半透明性に対応するために使用している技術は「光の偏光」と呼ばれ、ここでGabijaの専門知識が活かされています。 彼女によると、偏光技術は多くのデジタルカメラでも使われており、これによってTRIOSはパウダーを使うスキャン方法を不要にできたそうです。

詳細は省きますが、光は鏡面反射、表面散乱、内部散乱(体積散乱)の3つの方法で反射します。

TRIOSが歯の表面に投影する光は、これら3種類の方法によってランダムまたは非偏光状態になります。 以前は、パウダーを使用して歯を完全に不透明にすることでこの問題に対処していましたが、Gabijaたちエンジニアは光の偏光技術を使った別の解決策を考案したのです。 この技術により、TRIOSは主に歯の表面から戻ってくる光信号の偏光特性(偏光指紋)を識別することができるのです。

残念ながら、Gabijaの要望により、これ以上TRIOSの偏光技術の詳細についてはお話しできません。 彼女は「企業には秘密があるものですからね」と話していました。

口腔内スキャナーメーカーの選び方についての最終考察

最後に、歯科医療従事者が複数の口腔内スキャナーのメーカーからどれを選べばよいか判断する際に、これまでの情報が参考になるのかをMadsに尋ねました。 彼はその質問に対し、歯科医療従事者が口腔内スキャナーを選ぶ際やデジタル歯科を始める際に注目すべき3つのポイントを挙げてくれました。
Madsのアドバイスは次のとおりです:
  1. 臨床研究や文献を確認する
    口腔内スキャナーの精度を確認しましょう。 「独立機関のたくさんの臨床研究資料が公開されています。3Shapeのウェブサイトにも、参考になる 臨床研究のライブラリーががあるので、ぜひ参考にしてみてください。」</strong臨床研究や文献を確認する
  2. 実際にスキャナーを試す
    展示会などでさまざまなスキャナーモデルを試してみて、自分の手にしっくりくるものや、操作しやすいソフトウェアを備えているかを確認しましょう。 Dr. Mark McOmieは、口腔内スキャナーの評価をするための基準を提案しました。
  3. 実際の口腔内でテストすること
    最も重要なのは、スキャナーを実際に口腔内でテストすることです。 「プラスチックやアクリル製の模型をスキャンするのは、スキャンの感触を確認するのには良いのですが、実際に唾液やスキャンしにくい部位、スキャンのスピード、患者さんの快適さなどをチェックするには、口腔内でのテストが不可欠です。 市場に出ているどのスキャナーでも、模型のスキャンは問題なくできるということを忘れないでください。 ですが、重要なのは、実際の口腔内の複雑な環境でどれだけ精度よく対応できるかという点です。」

私たちと一緒に歯科印象の未来を探りましょう

Andrew Singerについて

Andrew Singer

歯科ライター

3Shape

Andrew Singerはデジタル歯科分野のライター兼ジャーナリストで、最近3Shapeの同僚であるMads・ブロクナー・ファルケンバーグ・クリスチャンセン氏とGabija・キルサンスケ氏と話す機会があり、大きな気づきを得たと語っています

Madsは3Shape’s Senior Discovery Managerで、Gabijaは光学技術を専門とするシニア・スキャナー開発者です。 彼は2人に、TRIOS口腔内スキャナーの仕組みと、一般的な口腔内スキャナーの機能について説明してもらいました。